口腔外科の発端は学生時代に友人から、
「自分のかかりつけの歯医者で、歯が抜けないと言われたんだけど、なんでなの?」
と聞かれた際に
「確かにそれはおかしい。歯医者であるのに、歯が抜けないと話にならない。」
と思ったことがきっかけだったように思います。
人間は年を取ると全身疾患が増える。
そのような疾患のある患者さんに対応できるように、
また各種薬の事などを知っておかなければならないという思いがありました。
口腔外科は歯科の各科のなかで、最も全身の事を学ぶ範囲の広い学科であり、
最も医科に近い学科ともいえます。
学科範囲が広く、また外科的手技を学ぶのも若いうちでないと
習得が難しいと言われていたために、弱点克服の目的もあって、
卒業後すぐに歯科界最高学府と言われる大学の口腔外科の医局に入局をしました。
(実は学生の時は口腔外科が一番不得意でした。)
「とんでもない所に入ってしまった・・・」、
と気づいたのは既に入局した後だったのです。
医局は日本全国から集まった優秀な新人歯科医師が集まっており、さながら外人傭兵部隊のような場所でした。最初のうちは皆に遅れをとらぬよう、ついていくのに必死で毎日居残りをしていたものです。
結果的に開業医になった今、振り返ってみると外科分野を大学の時に学んでいたことが、現在の診療に幅の広さと奥行きの深さを与えているように思います。
一般的には大学病院に紹介するような難しい親しらずの抜歯についても、
当院では対応できます。
難度の高い親しらずの抜歯などで、伝達麻酔(ブロック麻酔)という通常の麻酔よりも効果の高い麻酔も行えます。
唇や舌にある良性のできもの、依頼に応じて上唇小帯や唇や舌の裂傷治療、嚢胞切除なども行えます。
粘液のう胞 |
摘出後1週間経過 |
舌潰瘍 |
そのために、各種機材を整備すると共に麻酔液についても複数種準備をしています。
(一般的には複数の麻酔液を準備しているのは珍しいように思います。)
ほほの内側にできた良性腫瘍 |
腫瘍切除後 |
右頬部腫瘍摘出物 |
治療にあたる際の全身疾患(高血圧や糖尿病など)と、
薬との関連などに注意しながら治療を行わなければならない点を特に気を付けています。
患者さんの中には歯だけではなく、歯以外の全身的な体の不調などの医科的疾患に対して、私自身は専門ではないと言っているのですが相談される方も多々いらっしゃいます。
そういった場合はわかる範囲でお答えするようにしています。
開業を決意した際、
「大学病院に行く前の、地域での最後の砦になりたい」
という思いがありました。
口腔外科だからどんどん歯を抜くかというと、私の場合はスタンスが違っていて、
歯は極力残すべきだと考えています。いざとなればいつでも抜くことができます。
だからこそ、まずは抜かずに済む治療にチャレンジしようとしています。
口腔外科出身で歯を抜くのが得意なのに、
最近は極力歯を抜かないスタンスをとっているのはなんだか面白いですね。