入れ歯
インプラント時代だからこその入れ歯
インプラントは万能であるという過剰な期待感に危機を抱いています。
TOPページにインプラントに対する懸念を書きましたが、インプラントはメリットだけではないということを考えた場合、入れ歯というのも重要な選択肢の1つだと思います。
1)入れ歯で最も重要な要素
入れ歯こそ経験や勘所(かんどころ)といった、職人技の要素が重要になる治療です。
昨今ではインプラントの傾向が多いため、臨床現場において入れ歯技術の修練や継承が少なくなりつつあるような感じがしています。
幸いにも、私は入れ歯について多くの修練を積む機会に恵まれました。

様々な入れ歯 |
入れ歯には様々な「咬み合わせ理論」がありますが、それらの中から、
患者さん個々の状態に“ベスト”と思われる理論を部分的に拾い出し、
組み合わせることによって最適な入れ歯を作れることが当院の強みです。

近年「各種理論を理解し熟考し、個々の患者さんに当てはめる総合的な診療」といった
当院と同じスタイルの理論が、歯科大学の教育でも取り上げられることが増えてきています。
入れ歯学も進歩をしています。しかし基本的に守らなければならない基礎的な部分は昔から変わりません。
一般的に入れ歯は、教科書的には半年経つと合わなくなるとされ、作り変える必要があると言われていますが、当院の入れ歯の場合は、5年間くらいは作り変えずにすむ人達が多いです。


1年後 | 8年後 |


3年後 | 9年後 |
患者さんによっては10年以上経っても作り変えずに、快適に使っていただいている人々もいます。


10年後 |

10年後 |
2)インプラントとの比較
インプラントはたしかに取り外したりする煩わしさがなく、自分の歯のようによく噛めるというメリットもありますが、“老化に伴う生体変化に適応しにくい”という事実があります。
歯科医学的立場では
「生きることとは、死ぬまで栄養摂取をし続ける事」
裏返せば、
「食べられなくなるということは、栄養がとれなくなり死が近づく」
ということに他なりません。
野生動物にとって食べられないことは死に至ることなのです。
ゆえに、老化に伴う体の変化の多い人生終末期においては、特に“入れ歯”の意味合いはより重要性を増してくるのです。
入れ歯がインプラントと比べて良い所は
・(入れ歯が)駄目になった時の修理や作り直しなどが、比較的容易にできる
・メスを入れたりなどの体に傷をつけたり、負担をかけたりしなくてよい
どの歯科医であっても入れ歯を持っていけば何らかの手を打つことができますが、インプラントの場合では対応をしてくれる所が限られる可能性が高いのです。
(各種のインプラントメーカーにより、それぞれのシステムが独自に異なるからです)
例えば、全身状態が悪く寝たきりの人にインプラントが入ってしまっていると、
ベッドサイドや自宅で取り出すことは難しく、高齢であること、全身状態が悪いこと、
様々な薬を飲んでいることなど、それら自体がリスクとなりインプラントを除去する
外科的処置は困難な場合もあります。
昨今、認知症や脳血管障害に起因する麻痺、寝たきりの介護などの増加が
“超高齢化社会”の現在においても危惧するところです。
人生の終末期において、いかに食べられるようにするかという点で入れ歯には大きな意義があります。
世界に目を向けると、日本の入れ歯技術は世界の中でもトップレベルにあり、アメリカの歯学部に日本の先生が教えに行っているケースもあるのです。
3)当院の入れ歯づくりのこだわり
ここだけはキーポイントとして押さえておかなければならない
という基本を、しっかりと行い、そして妥協しない。
当たり前といえば当たり前なのですが、これが当院の入れ歯づくりにおけるこだわりです。
例えば、型どりの際、人それぞれの口の状態に合わせた個人用の型どりトレー(個人トレー)を全ての症例において作り、それを使って歯型を採ります。

その型どりトレーを使い、ほっぺたや舌、口の筋肉の動きを記録する「筋形成」も基本通りに私自身が行います。 |
型どりの材料(印象剤)についても、“入れ歯用に適した専用の物”を使用しています。 |
作る工程において、入れ歯は変形しやすいので極力変形をおこさせないために、技工士などとも密に連絡をとり、かなりこだわって作ってもらっています。
(歯の種類やかみ合わせなどを随時、私自身がチェックするようにしています。)
そういった基本をしっかり押さえることにより手間暇・時間はかかりますが、逆に完成後の微調整回数が少なく済む場合が多いです。
(平均的に4回以内の調整で済んでいる症例が多いです。)


今までほとんど食事を摂ることができなかったご高齢の患者さんが、当院で入れ歯を作成したことがきっかけで食事がとれるようになった事例もあります。


バネなど入れ歯の見た目が気になる方には、バネの目立たない入れ歯や、硬くない入れ歯も作ることも可能ですのでご相談ください。




【著者】デンタルオフィス宮村
院長(歯科医師) 宮村壽一