顎関節症治療

顎関節症治療

顎関節症治療

1)間違いだらけの顎関節症


顎関節症は歯科なのか整形外科なのか、外科や耳鼻咽喉科なのか悩まれることも多いのですが顎関節症は歯科の守備範囲です。
それは健康保険診療の中で“歯科の領域にある”ということからも明らかです。


正常な人でも約40%の方は何らかの顎関節症の症状をもっていると言われています。


「かみ合わせが悪い」=「顎関節症」

と直結させる考え方は、ひと昔前の古い間違った考えです。
(ただし、かみ合わせは顎関節症を悪化させる要因の1つではあります。)


つまりは、”かみ合わせが悪いことだけでは顎関節症は起きないといってもほぼ間違いありません。


顎関節症は“他の疾患を除外診断した上”で、はじめて病名の診断がつくことであり、さらには顎関節症とひと口に言っても、その顎関節症の症状、筋肉の痛み、関節の痛み、軟骨のズレなど、表れる症状は様々で複合的な症状としても表れることがあります。


それによって治療法や処置法も症状に応じて異なることから
しっかりとした診断が必要」となります。




表れる症状が個々で異なり、また、複合的にも症状が発症する場合もあることから「私の顎関節症は●●で治ったから、貴方も●●を試してみたら?」というようなことは安易にアドバイスしてはいけません。


また、整体などに行って「顎関節症で顔が歪んでいるから」と言って顎をカクカクと動かしたり「頚椎や背骨などの骨がズレているから」といった理由のアプローチで、顎関節症を治そうという事もやってはいけません。


顎関節症は骨だけの疾患ではなく、レントゲンに写らない軟骨・靭帯(じんたい)・筋肉の単独または複合障害のため、悪化させる可能性が高くなるのです。



同じ歯科医師であっても顎関節症に対して理解の薄い人は意外と多いのも事実なので、しっかりとした診断・治療を受けるのであれば、認定医や専門医の診察を受ける事をお勧めします。(顎関節症の認定医専門医:一般社団法人日本顎関節学会ホームページ)





2)顎関節症について


1990年代までは“かみ合わせの疾患”という認識がなされていた顎関節症は、
21世紀になってから「顎関節症は骨と軟骨と筋組織などの人体組織の複合疾患である」ということがわかってきました。


現在顎関節症は、世界標準の統一見解にて統一基準での診断と治療方法が確立されつつあります。(2017年現在)



顎関節症を構成する要素としては大きく4つあり、

①筋肉の障害
②顎関節部や靭帯(じんたい)の障害
③軟骨のズレによる障害
④骨の変形によるもの

上記の4つの要素が1つまたは複合的に関係することで顎関節症となります。


その他にも考慮しなければならない事柄として、心身的な要因(精神的な要因や癖、歯軋りなど)も複雑に絡む場合が多く見受けられます。



顎の軟骨がずれるのは、外力(くいしばりや歯ぎしり、長時間の歯同士の接触などの応力)によって起こることが研究によって明確となりました。


そして強い力ではなくとも、軽い歯の接触が持続的に長時間続くことで軟骨がずれることもわかってきています。


持続的に歯をくっつけることによって軟骨がずれるばかりでなく、頬の筋肉やこめかみが痛くなる場合もあります。また、急に大きな口を開けたり、硬いものなどを急に噛んだりすることなども顎関節症を発症させる要因となり、さらには日常生活への支障をきたす場合もあります。




よく混同されるのですが、
ぶつけたりして急に痛くなるのは顎関節症の中でも、正式には「外傷性顎関節炎」です。
顎が外れると口が閉じなくなるのは、正確には「顎関節脱臼」と言います。

(詳しくは日本顎関節学会ホームページ)


他にも、“口が開かなくなる場合”では顎関節症の病名もありますが、
筋突起過形成側頭筋腱膜過形成、腫瘍、骨折、軟骨腫症なども同じような臨床症状を示すため、適切に除外診断をした上で、顎関節症の診断をしなければならないのです




音がプチプチ、カクカク鳴って口が開けにくい一例

音がプチプチ、カクカク鳴って口が開けにくい一例
造影検査画像

真ん中に軟骨が薄く黒く抜けて見えます
下あごの骨の直上の隙間に造影剤が
白く正常に入っています
上側の隙間の造影剤がまだらです
  模式シェーマ図

【診断】軟骨腫症(なんこつしゅしょう)
上の隙間の造影剤がまだらで
黒っぽく抜けて軟骨腫が見られます
手術で軟骨腫を取り除きます


これらのことからもわかる通り、顎関節症とは1つの病気に対して1つだけの原因ではないことから「顎関節症=かみ合わせ」と決めつけるのはあまりにも短絡的なのです。


顎関節症を発症する原因は、大きなあくびや頬杖、かみ合わせを含めた、例えるならば1個1個の小さな積み木で、この積み木の積み重ねが各個人のキャパシティ(許容量)を超えた時に症状として、また突発的にも表れ、前記したように「似た症状を排除した後に残った診断名」それが顎関節症なのです。




3)治療について


顎が痛い、口が開けづらい、カクカク音がする、口が閉じにくい、など症状は様々ですが
顎関節症には「急性期」と「慢性期」があり症状や時期によって行う治療方法が様々に異なります



正常な開閉の状態

正常な開閉の状態
閉口状態

下顎頭(下あごの骨)のやや前方に
円板(軟骨)が挟まった状態で位置します
  開閉口途中

下顎頭(下あごの骨)の動き出しと共に円板(軟骨)も挟まれながら移動します
  開口状態

関節結節(頭側の骨の突起)を
乗り越えたあたりで下顎頭(下あごの骨)のやや後方で円板(軟骨)は挟まれた状態で開口します


正常な閉口状態

正常な閉口状態
造影検査画像

真ん中に軟骨(円板)が
薄く黒く抜けて見えます
下あごの骨の直上の隙間と
上側の隙間に造影剤が
白く正常に入っています
  模式シェーマ図

下あごの骨の真ん中
白い造影剤の間に黒く抜けている部分が
軟骨(円板)です



ステージによっても「積極的な介入の治療」と「リハビリ的な治療」とがあります。

例えば、このステージまでならこの治療を行うが、このステージ以降であればリハビリを中心に行うなどや、口が開かない時にも“口を開けないで安静にする時期”“積極的に開ける時期”とがあります。




クローズドロック(円板障害Ⅲa)
急性期/積極治療

クローズドロック(円板障害Ⅲa)急性期/積極治療
造影検査画像

真ん中の軟骨(円板)が前にずれて見えます
  模式シェーマ図

直近に軟骨(円板)が前にずれて引っかかり
口が開かないため、早期の治療介入が必要です



協調失調(円板障害Ⅲa)
慢性期/積極治療

協調失調(円板障害Ⅲa)慢性期/積極治療
造影検査画像

真ん中の軟骨(円板)が薄くなって
変形しており、下あごの骨よりも
かなり後ろにあります
  模式シェーマ図

長いこと、口を開けるたびに
引っかかって閉じにくいため
積極的にリハビリ治療を行います



癒着(円板障害Ⅲb+変形Ⅳ)
慢性期/積極治療

癒着(円板障害Ⅲb+変形Ⅳ)慢性期/積極治療
造影検査画像

上あごと下あごの間の隙間が
繊維癒着を起こし狭くなっています
  模式シェーマ図

長い間かけて癒着がおこり
口が開かなくなっています
内視鏡手術を行う場合もあります



クローズドロック(円板障害Ⅲb)
慢性期/リハビリ治療

クローズドロック(円板障害Ⅲb)慢性期/リハビリ治療
造影検査画像

真ん中の軟骨(円板)が前にずれていて
軟骨の変形もみられます
  模式シェーマ図

時間経過が長期間たってしまっているので
リハビリ治療にて機能回復します



完全顎関節脱臼
急性期/開口制限リハビリ治療

完全顎関節脱臼 急性期/開口制限リハビリ治療
造影検査画像

真ん中の軟骨(円板)が下あごの骨よりも
かなり後ろにあり引っかかっています
  模式シェーマ図

軟骨(円板)は変形しておらず
大きな口を開けると
円板が引っかかります



軟骨変形(円板障害Ⅲb)
慢性期/リハビリ治療

軟骨変形(円板障害Ⅲb)慢性期/リハビリ治療
造影検査画像

真ん中に軟骨(円板)が薄くて
平たく判りにくいです
  模式シェーマ図

プチプチと音がして開けにくい状態です



癒着・穿孔(円板障害Ⅲb+変形Ⅳ)
慢性期/リハビリ治療

癒着・穿孔(円板障害Ⅲb+変形Ⅳ)慢性期/リハビリ治療
造影検査画像

真ん中の軟骨(円板)の後の組織に
穴が開いています
また前方部は癒着がみられます
  模式シェーマ図

リハビリにて痛みの除去と
機能の回復を行います




単にマウスピースのスプリントを入れれば良い、や、かみ合わせの調整だけで済むという単純な話ではないのです。

スプリントの種類も症状により多様に使い分けます。



オムニパックタイプスプリント
(オムニ型)

オムニパックタイプスプリント(オムニ型)
顎関節に対する負担軽減や音の軽減


スタビラゼーションタイプスプリント
(全歯列接触型)

スタビラゼーションタイプスプリント(全歯列接触型)
顎関節に対する負担軽減もしくは筋肉のリラクゼーション またはその両方


ピヴォットタイプスプリント
(ピボット型)

ピヴォットタイプスプリント(ピボット型)
軟骨が引っかかって口が開かない時に使用


リポジショニングタイプスプリント
(前方整位型)

リポジショニングタイプスプリント(前方整位型)
軟骨の再度引っかかり防止や音の軽減


“柔らかいスプリントは、かえって噛みこみを助長させる”という結果は研究によって明確となっており、かみ合わせ調整についても、顎関節症では治療順の後半の安定期に行うものとされています。

マスコミ報道もあってか顎関節症そのものが一般の方を含めて誤解されている部分もあり、全国レベルで見ると残念ながら歯科医師の中でも顎関節症についての理解が乏しい人々も多く、正しい適切な診断法や治療法についての認識がまだまだ薄いと言わざるを得ません。


顎関節症は放っておいても自然に治るという見解を示す歯科医師の声も聞こえてきますが、これは2年間の経過観察で約40%の方は口が開かなくなり約60%は自然に戻っていくという研究結果の論文が基で、この一部分だけを拡大解釈したものです。しかしながら自然回復するまでの期間が約2年と比較的長く、またその間の痛みの対処も本来は医療として必要なはずです。


早い段階での適切な医療介入によって痛みの軽減・除去や病的期間をなるべく短くすることが、元来の医療の根本では無いでしょうか。


そうした意味においても認定医専門医達「複合的要因を“総合的”に勘案」した上で診査・診断を行い、治療方針を決定してゆくわけです。




患者さんの症状を注意深く聞きながら、治療を試み、膝と同じように顎の関節に注射をして水を抜く場合(パンピング療法)や、関節を洗い流す潅流(かんりゅう)療法と呼ばれる手技を行う場合も稀にあります。
これらは当院が顎関節症専門医関連研修施設でもあるがゆえに行える、高度な専門的手技の術式です。



パンピング写真

パンピング写真
あごが引っかかって、31mmしか開きません   関節中の水を抜き、麻酔薬を入れる   針を残して関節の中が
綺麗になるまで繰り返す

パンピング写真
  繰り返すことで、炎症性の関節液が薄くなる   パンピング終了後、あごの引っ掛かりを外す   引っ掛かりが外れて、43mmまで開きました

再三述べているように、顎関節症の症状や原因は様々であり、かつ治療方法も多岐に渡るため、一概に治療法は●●とは申し上げにくい部分がありますが、しかしながら大切なのはその症状にあった処置法を適切に選ぶ、ということです。


そのためにも正しい知識と、症状に適切に対応した治療を行える専門医・指導医の下で治療を受けられることが望ましいと言えるでしょう。
(詳しくは日本顎関節学会 顎関節症とは?)



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